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もう一度(15)

走った。全力で走った。サッカー部の地獄のランニング以来だ。苦しさはあったが一秒でも早く会いたかった。
息を切らせて公園に着く。呼吸を整え辺りを見回す。
姿は見えない。噴水のある場所に向かう。
彼女はベンチに腰掛けていた。
「楢舘さん」驚いた様子だ。
「こんなところでどうしたんですか?」
オレは返答に困ってしまった。無我夢中でここまで来たが何て言えば良いんだ。
「楢舘さんの宝物って何ですか?」
オレにとってのか。。。
「私はこの公園での楢舘さんとの思い出が宝物なんです」
柔和に微笑む。
「8ミリ見たよ」
ぽつりと呟く。
「今まで気づかなくてごめん」
「ずいぶん昔のことですし忘れちゃいますよね」
くすっと笑う。
「私はすぐに分かりましたよ。昔のままでした。」
申し訳ない思いでいっぱいだ。
「あの時のこと覚えてますか?」
オレは鮮明に当時のことを思い出していた。
「覚えているよ、ハチをここで拾ったことやお互いの夢を語ったことを」
「私あの頃一人ぼっちで不安で本当に胸が張り裂けそうだった。」
オレ達は家族関係に問題を抱えていてその事が親密さを深めさせた。
「約束を果たせてほっとしたよ。」
オレは心の重荷がとれて安堵の表情を浮かべた
「私ずっと待ってたんですよ、あの時からずっと」
「ずっと?」
「イブに必ずここで待ってたんです。」
彼女はオレが別れる前に何気なく約束した言葉を信じて待っていたのにその事を忘れ、美夕ちゃんに会って初めて思い出した。
「美夕ちゃんオレ。。。」
言葉がつまる。
「やっと昔の呼び名で呼んでくれた。おにいちゃん会いたかったよ」
初めてあの頃の微笑みを見せた。
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[ 2016/01/29 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

もう一度(14)

和洋中色とりどりの料理が並ぶ。
つまみもバリエーション豊富で高い金を払って居酒屋に行くのがバカらしくなるほどの豪華さだ。
「さすが晋作だぜ、今日は盛り上がるぞ」
飲む気満々の仙一。
「ここまで行くと女として敗北感しかないわね」
呆れた様子の絢。
「じゃあ、絢の新しい門出を祝って乾杯」
ホスト役として最初だけは仕切らせてもらう。
オレがボケて仙一がツッコミ絢が回す昔と変わらないスタイルでバカ騒ぎが続く。
箸休めにデザートを持って戻ると仙一がマドマギのほむらのフィギュアをじっと見つめている。
実はオレは、マドマギのほむらがお気に入りなのだ。
「仙一お前ほむらをそんな凝視してキモいんだが。。。」
「晋作が他人の事言えないでしょ。」
「あのさ、何か思い出さないか?」
仙一が意味深な事を言う。
「思い出すって何を?」
オレは全く身に覚えがない。
「タイムカプセルだよ。晋作が引っ越すとき庭に埋めただろ」
あー、オレと絢が声を揃える。
「掘り返そうぜ」
「今から?」
「当たり前だろ、こんな面白いものほっとく手はないぜ」
オレ達は懐中電灯片手に記憶を辿りながら地面を掘り返す。
当初の思わくとは裏腹に一向に見つからない。
記憶が曖昧なのと広い庭のおかげで結局堀当てるのに一時間近くかかってしまった。

へとへとになったが全員興味津々だ。
箱を開けると当時にタイムスリップしたかのような錯覚に陥った。
懐かしい品の数々。思出話に花を咲かせるなか気になるものを発見した。
「これ8ミリフィルムだな、何を撮ったんだろう?」
「面白そうだな早く見ようぜ」
「私も見たーい」
オレは祖父の部屋に映写機を取りに行った。
祖父は映画が好きでよく、オレの事を撮っていたことを思い出した。

映写機をセットする。
さて、何が写っているのやら。
ごくあり触れた街並みが映し出された。今とは大分違う当時の街並みだ。船中が現れサッカー部の部室。
ドアを開けると当時の仲間達だ。
「マジかよー、よもぎんだよ」
仙一が大声をあげる。
「あー私も写ってる」
絢が大笑いする。
オレが記念に撮ったものだ。
大盛り上がりだが一つ引っ掛かるものがあってフィルムがもう一つあるのだ。
確か2本も撮ってないはずだが。。。
「よし、次のも見ようぜ」
「早く、早くー」
二人が急かす。オレは腑に落ちなかったがセットする。
天沼公園だ。
「さっきより上手く撮れてるわね」
「少しは進歩したんだろ」
言いたい放題だな。
画面が切り替わり固定されている。
女の子が枠外から走り込みこちらに手を振っている。
「私に素敵な思い出をくれてありがとう。」
足元に子犬が駆け寄る。
「イブにもう一度会おうね、おにいちゃん」
そこでフィルムは終わった。
「泣きぼくろのかわいい娘だね。このこ誰?」
「。。。」
オレと仙一は固まって声がでない。
「ちょっとう、どうしたのよ二人とも」
絢は訳がわからない様子だ。
オレは時計に目をやる。11時を少し回ったところだ。急いで玄関に駆け出す。
「待ってよ晋作あの女の子と何かあったの?」
オレは振り向かず
「約束を果たしてくる」
外に飛び出した。
[ 2016/01/24 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

もう一度(13)

スーパー、ヤオコーで大量の食材と酒選びでカートは満載だ。
自慢だがオレは子供の頃から自炊をしているので料理の腕はピカイチ。
残り物で作るチャーハンはそこらの店よりも美味い。
スマホのバイブが鳴る。誰だこんなときに。ディスプレイには八月一日美夕と出ている。
「美夕さんどうしたの?」
「度々ごめんなさい。ハチの散歩で近くまで来ているので会いませんか?」
オレは、ハチに会えるので喜んで承諾した。もちろん彼女に会えるのも半分あるが。

例の公園に向かう。
オレの大量の荷物を抱えた姿を見て彼女は目を丸くし申し訳なさそうにした。
「あー気にしなくて良いから、友達の祝勝会があってその買い出し中だったけどハチに会いたかったから」
ハチは尻尾をこれでもかと振る。
「私、楢舘さんに迷惑ばかりかけてますよね。。。」
「そんなことないよ。オレも楽しいし遠慮しなくていいから」
彼女は柔和に微笑んだ。
「それにしても最近やたらこの公園に来るなー。」
「私ここに大切な思い出があってとても好きなんです」
さっきとは違い微妙な微笑みだ。
「まー誰にでも大切な何かはあるよ。」
「そうですよね。他人にはさまつな事でも本人にとっては宝物になりますから」
「宝物か」
オレにとっての宝物はなんなんだろう。
「私、祖母がフランス人でクオーターなんです」
唐突に何だ?
「だから、子供の頃はよく、外国人に間違えられたんです」
くすっと笑う
「あー大人になって顔つきが変わったんだね」
「そうなんです。昔の写真を見ると今と大違い」
また、くすっと笑う
「オレは昔から全く変わらないよ」
「そうなんでしょうね、子供のままですね」
ズバッと言われてしまった。。。
「私もう行かないといけないんで、これで失礼します。今日はありがとうございます」
丁寧にお辞儀をしハチを促し踵を返した。
一体何がしたかったんだ?
[ 2016/01/18 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

もう一度(12)

会場には、パンフレットや花束を持った人だかりでごった返している。
オレはパンフレットを手に取り目当ての名前を探す。
No.13高坂絢
開演にはまだ時間がある。楽屋に行けば絢に会えるが迷った末にホールに向かう。
思ったより広いな。最後尾で立ち見をする。
最初の一人目の演技が始まる。
何回か見たがバレエは高い身体能力を要する厳しい種目だ。
素人目にもかなりのハイレベルなのが分かる。
次々演技が終了し絢の出番が来た。
リラックスはしているようだ。
ジゼルは絢の得意演目だ。
しなやかな動きで表現する絢の演技は上手く説明が出来ないが人を惹き付ける何かがある。
ホール内の全ての人間が絢に釘付けだ。
演技を終えると静まり返っていた反動で割れんばかりの拍手と歓声だ。
どうやら、最高の演技をしたようだ。
オレは、踵を返しホールを出た。

スマホのバイブが鳴り電話に出る。
「晋作ー私優勝したよー」
絢が興奮した様子で話す。
「これから、祝勝会をやるのほんとうれしい」
「そうか、よかったな」
「何よ、その素っ気ない反応」
不満そうな様子が電話越しに伝わる。
「オレは、何もしてないしお前の努力に対して余計なことは言えないよ」
「そんなことないよ、晋作が来てくれたから私の全てを出しきれたんだから」
「は?オレが会場に居たなんて何で分かるんだよ」
「分かるよ、晋作なら来てくれるって。全てお見通しなんだぞ」
クスクス笑う
「そっか」
「でも、これでまた会えなくなっちゃうね」
絢の声が少し落ちる
「。。。」
「今日は皆とお祝いするけど明日改まって仙一と3人でやろうね」
「明日はイブだぞ?」
「あなたたちがイブに予定があるわけないでしょ。もう、電話切るね。じゃあね」
一方的にイブの予定を決めやがって。
オレは、仙一に電話をし事の成り行きを話す。
「マジかよー、こっちだって色々予定があるんだよ。」
「だよな、悪かったな絢には話つけとくよ」
少し間が空いてから
「やっぱ行くわ。3人で何かやるのもこれが最後かもしれないしな」
「そうか、恩に着る。また連絡するよ」
通話が終わりオレは、これが最後かもしれないと言う言葉がいつまでも頭から離れなかった。
[ 2016/01/14 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

もう一度(11)

井の頭通りを歩いていると下品な重低音を響かせたフェラーリがクラクションを鳴らした。
サイドウインドウが下がると思った通りのアホ面とご対面だ。
「やあ、少し話したいことがあるんだ。乗ってくれないかい?」
オレは助手席に座った。
「話したいことって?」
「ここでは、ゆっくり話せないから場所を変えよう」
ほんとうるせー音だ
「こいつは空でも飛ぶのか?」
「ははは、君のような人間には分からないだろうな」
挑発するようにエンジンをふかす。

某高級ホテルのラウンジに連れてこられた。周りはフォーマルな格好でジーンズにダウンのオレは明らかに場違いだ。オレに恥をかかかせたいんだろう。
大して美味くないのにぼったくるコーヒーを飲む。
田中は長々と自己満を披露している。
「まぁ君は絢さんには不釣り合いと言うことだよ」
「あっそ、それで話したいことは済んだのか?」
「フフフ、この期に及んで強がりかい?」
勝ち誇った顔だ。
「もう、絢さんに付きまとうのは止めてもらおう」
どっちがつきまとっているんだよ。
「ここは僕がご馳走しよう」
わざとらしくブラックカードを取り出す。
「いや、ここはオレが出すよ」
「無理しなくていいのに」
にやけた顔だ。だがオレが取り出したカードを見て顔色が変わった。
「え、そのカード、パラジウムじゃないか、本物か?」
「偽物で会計出来るか?」
「何で君がそんなものを持っているんだ?」
「ちょいと金儲けに成功して腐るほど金を持っているんだよ。持ち歩く訳にも行かないからな」
田中は茫然自失だ。
「じゃあな」
金以外何もないあいつには丁度いいお仕置きだったな。
[ 2016/01/08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

もう一度(10)

最寄り駅から20分程行ったところにシネコンがある。
普段映画館になど来ないが美夕さんに誘われたのだ。
まさか、向こうから連絡があるとは思っても見なかった。
オレは普段通りの服装だったが、彼女は雑誌のモデルがリアルだとこんな格好なんだろうなと思わせる洗練された装いだ。
映画の内容は親子の成長を描いた淡々とした内容だが深く考えさせる良作だった。
昼食をファミレスで取ろうと向かうと
「あれ、晋作も来てたのか」
仙一とばったり遭遇してしまった。
「その娘は?」
「前話した犬の飼い主だよ」
「あーあの娘か」
「初めまして、八月一日です」
礼儀正しく挨拶をする。
「あ、こちらこそよろしく、晋作の悪友の藤堂です。」
お互いに軽く挨拶をして別れた。

ファミレスで映画の感想を言い合う。
「やっぱ、母親役の演技が良かったなー。あれで物語に引き込まれた」
「私は子供たちがかわいくて、素敵な家族だと思いました」
一通り話終えて、オレは何気なく質問した。
「クリスマスはどうするの?」
「ずっと前から約束していてイブに会うんです」
こんなかわいい娘の相手なんだから相当良い男なのだろう。
「オレは残念ながら何も予定はないよ」
「そうですか」
「さて、もうそろそろ時間だ。あまり時間がとれなくてごめんね。」
「いえ、楽しかったです。また、会いましょう。」

オレは久しぶりに東京で用を済ませたついでに上野に来ている。
すごい人だかりだ。
どこぞの巨匠の絵を目当てに来てるんだろうな。
勿論絵ど分かるはずがない。何となく来てしまった。ベンチに腰掛けボケッと池を眺めている。
明日の結果次第で絢の運命が決まる。
正直うらやましかった。
生き生きとした目の絢が輝いて見えた。
「夢か。。。」
オレには叶えたい夢なんてもうない。
もう一度オレにも夢が出来るのだろうか。
[ 2016/01/01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)





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