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星くずの夜(2.3)

沢村は、田代の後始末を終えミネラルウオーターを口にする。
散々ごねられたので疲労困憊だ。
「あの人が戻ってきたか・・・」

俺は、駆け出しの頃にあの人に出会い直ぐに魅了された。
華麗な打ち回し、何よりあのたたずまいがたまらなくかっこよかった。
歩き方から、食べ方、服装、とにかく真似できるものは全部真似た。
少しでも認められたくて、必死に努力し、ライバル達を打ち負かした。
だが、あの人は俺の事なんか見ていなかった。
あの人が見ていたのはあいつだけだった。
だから、俺はあの時・・・

ここ数日、ヘブンズドアの客層に変化が表れ始めた。
金持ちの素人に紛れて、プロの姿が見受けられる。
もっとも、おこぼれをもらおうとするハイエナがほとんどだ。
この後、大金を賭けた麻雀トーナメントの抽選が始まる。
その前に金持ちから、ふんだくろうという腹なのだろう。
人でごった返した中に、例のボスがいた。
小物ばかりが目立つ中、ポーカー場の異様な盛り上がりに怪訝な顔をする。
大柄で、声が大きく、態度のデカイ男がバカ勝ちしていた。
「小池か・・・」
普段、他人を見下して生きている連中が苦渋の表情を浮かべる。
それを、ちゃかして更に煽る小池。
挑発に乗って突っこむ金持ち。ギャンブルで負ける典型的な画だ。

今度は、ブラックジャック場から大歓声だ。
「今度は何だ?」
少女がディーラー相手に快勝を続けている。
その勝負っぷりも見事だが、可憐な表情に周りは釘づけだ。
少女の一挙手一投足に歓声が沸く。
まるで、聖者を崇める群衆のようだ。
「ちっ、何で俺より強いやつが4人もいる。話が違うぞ。」

壁際でミネラルウオーターを飲みながら静かにたたずむ武藤。
隣には観月がいる。
「この後の抽選でブロック分けが決まります。4人が決勝で偶然当たるように
なるといいですね。」
「都合がよすぎるものは偶然とは言わないぞ。」
「大事なイベントですからね、多少の演出は必要です。」
「お前の思惑に興味はない。」
「さあ、役者はそろいました。楽しみましょう。」
観月はニコッと微笑む。






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[ 2016/06/24 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

星くずの夜(2.2)

マンションの一室で男たちが麻雀に興じている。
表に看板らしき物も出さずにひっそりと営業しているのは察しの通り
違法賭博場だからだ。
いかにもボスと言った感じの男が店に新たに入ってきた。
「何か変わった様子は?」
カウンターのボーイに尋ねる。
「今日は特に変わったことはありませんねー」
「そうか」
男がタバコに火を点けたと同時に視線が止まる。
「あの男は?」
アゴで対局中の客の男を指す。
「あー、あの客ならさっきから勝ったり負けたりで大した奴じゃないですね。」
「ちっ、面倒な奴が帰ってきたぜ。」
男は、タバコを灰皿に押し付けいまいましそうにする。

話題の客は、トップだったがリーチに一発で振り込み、まくられた。
「あー、今日はツイてない。この辺で止めとくわ。」
「では、清算します。」
ボーイが手際よく処理する。
「あれ?あんだけ打ったのに皆トントンだな。珍しいこともあるね。あはは。」
面子の一人がおどけてみせる。
「じゃあ、また暇な時に来るんでよろしく。」
相手にせずさっと席を立つ。

客の男と、店のボスの視線が交錯する。
「よう、久しぶりだな武藤。」
「何だ、お前の賭場だったのか。悪かったな、もうここには来ないよ。」
「別にかまわんさ。それにしても相変わらず見事だな。場を完全に支配している。」
「この程度は差ほどの事もない。ただの腕ならしだ。」
二人の会話についていけない面子たちはポカーンと言った表情だ。
「例のイベントに出るつもりなのか?」
ボスが武藤に尋ねる。
「オレは気まぐれだからな。」
「そうか、なら俺は出るのを止めておこう。」
「何だ、久しぶりに打たないのか。」
「俺は自分より強いやつとは打たない主義だ。」
「そうか。」
立ち去ろうとする武藤にボスが声をかける。
「ヘブンズドアには行ったか?」
「いや、まだだが。」
「今は、沢村が仕切っている。」
「・・・」
「お前たちの因縁にも決着が着くかもな。」
「・・・」



ヘブンズドア

某IT企業が暴れまわっていたころに散々話題になった商業施設で堂々と営業していられるのは
政財界の大物が顧客だからだ。
勿論セキュリティーは万全。顧客の情報が他に漏れることは決してない。
いつの世も、権力者は特別な存在だ。
店内は、華やかな装飾と美女達で埋め尽くされ、さながらラスベガスと言った感じだ。
今夜も、ボディーガードを引き連れて黒い噂の絶えない某大臣が来店中だ。
沢村は今夜も忙しく歩き回っている。
何と言っても、大のお得意様の某大臣は、羽目を外しすぎてトラブルを巻き起こすからだ。
「マネジャー、田代大臣がまた問題を・・・」
ボーイが申し訳なさそうに報告する。
ふう、沢村が何度目かの深いため息をつく。
「今度は何だ?」
もう飽き飽きだと言う表情だ。
「それが、見慣れない客とポーカーを打っているんですが既に600は持って行かれてます。」
おいおい、勘弁してくれと言った表情の沢村。

ポーカーの周りはやじ馬で埋め尽くされていた。
皆、田代がどこまでハマるかおかしくてしょうがないと言った感じだ。
「田代大臣、そろそろこの辺で・・・」
沢村はそっと耳打ちをする。
「こんなところで帰れるわけないだろ。取り返すまでやるぞ。」
頭に血が上った田代には何を言っても通じない。
沢村は、どんな相手か初めて確認し己の不運を呪う。
田代と同卓した相手が武藤だとは。
「武藤さん、お久しぶりです。」
うやうやしく挨拶をする。
「あの時以来だな。」
武藤は、気のない返事だ。
「武藤さん、ここは退いてくれませんか?」
「何、勝手なことを言っている。」
田代の怒号がこだまする。
「オレは、お前に挨拶に来たついでに遊んだだけだからな。」
そういうと武藤は席を立つ。
「おい、ふざけるな。」
田代は武藤に掴みかかろうとしたところを沢村に取り押さえられる。
後を引き継いだボーイに促され田代は、渋々控室に連れて行かれる。
「武藤さん、今更何をしに来たのか知りませんが、俺はあのころとは違うし、もう戻れないんですよ。」
「オレは、決着を付けに来ただけだ。ただ、それだけだ。」
遠くから見守っていた女がニコッと微笑んだ。
























[ 2016/06/22 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

星くずの夜(2.1)

透き通るような清流で男が釣りをしている。
やる気があるのかないのかぼけーっとしている。
「あんたまた来てるのか。」
老人は、やれやれとあきれた調子だ。
「若いのに、のんきなもんだねー。」
「こうやってるとなーんも考えなくてすむんだよ。なーんもね・・・」

古びた田舎の温泉街。
その一角の雀荘で男女4人がにぎやかに麻雀を打っている。
そこに若い男がやってきた。
「あー、むっちゃんおかえりー。」
水商売風の女が語りかける。
「今日も釣れなかったんだろ?」
タバコをふかしながら中年男がニヤつく。
「魚はオレと一緒で気まぐれなんだよ。」
けだるそうに答える。
こちらに背を向けていたもう一人の女が振り返る。
!!!!むっちゃんと呼ばれる男は驚きの表情を見せる。
「あー、むっちゃん、こんな田舎に似つかわしくない美人を見て驚いてるぞ。」
中年男がひやかす。
「ちょとー美人ならいつも見てるでしょ。」
水商売風の女が冗談交じりに応える。
「確かに名前だけは美人のフジ子ちゃんは見てるけどね。」
中年男がゲラゲラ下品に笑う。
「このオヤジいつか本当に殺す・・・」
フジ子は顔をひきつらせる。

「初めまして。観月といいます。」
確かに美人だがありきたりな容貌だ。
だが、人のよさそうなニコニコとした笑顔がたまらなく魅力的だ。
「観月ちゃんはさー、一週間ほど仕事でこっちにいるらしいよ。」
あごひげを蓄えた男がなれなれしく話す。
「こちらの方は麻雀は打たれないのですか?」
観月があごひげ男に尋ねる。
「あー、むっちゃんは打てないからいつも後ろで見てるだけなんだよねー。覚えろって言ってもめんどくさいの一点張りでね。」
「そうなんですか。いつも麻雀を見ているんですね。わたしも打つより見てるほうが好きなんですよ。」
むっちゃんに向かって、ニコっとほほえむ。
「今日はもう帰るわ。」
むっちゃんは店を後にした。


気持ちのいい日差しの中、相も変わらず釣れない魚を待ち続けるむっちゃん。
「何か用かい?」
少し離れた背後に観月が立っている。
「こんなに離れていてもわかるものなんですね。」
「田舎には不釣り合いな都会の匂いがするからな。それよりこんなところに何しに来た?」
「近々、大きな仕事があるんですよ。その為にここで一仕事しなくていけなくなりまして。
ただ、難しい案件なのでほとほと困っています。」
「大きな仕事ねー。」
むっちゃんは、興味ないと言った感じだ。
「私は仕事をやるからには、完璧にこなしたいんですよ。その為にはどうしてもあなたのお力が欲しいのです。」
「今更、オレがしゃしゃり出るまでもないだろう。他に打ち手はいくらでもいる。」
「そう言う訳にも行かないんですよ。あの子の相手を任せられるのはあなた以外にいません。」
むっちゃんの顔つきが一瞬変わった。
「まだしばらくここに滞在するので気が向いたら連絡してださい。
武藤さん、魔女狩りを終わらせる責任があなたにはあるんじゃないのですか?」

日も暮れ始めた中、武藤はまだ川を眺めている。
「若いのに難しい顔をしとるな。」
いつも顔を合わせる老人だ。
武藤の隣に座りこむ。
しばし、無言が続き武藤から切り出した。
「なあ、じいさんやり残して後悔してることってあるか?」
何を急に言い出すんだという表情をする老人。
しばし、間を置いて「そりゃあ、いっぱいあるさ。仕事ばかりで家族のことを顧みなかったからな。
一人になって初めて分かったよ。本当に大切なものは何なのかとね。」
寂しそうな表情だ。
「あんたは、まだ若い。失くしたものの大きさに気づいてから取り戻そうとして、わしのようになるな。」
二人は一言も発せずその場を後にした。

3人の男たちが卓に着き、観月がニコっと武藤を迎えた。
いつもの、のほほんとした雰囲気とは異なりビリビリとした空気が伝わってくる。
「むっちゃん、あの人たちなんなの?」
田舎の雀荘に不釣り合いな男たちに不安そうなマスター。
「ちょっと麻雀打つだけだから大丈夫だよ。」
「え、むっちゃん麻雀打てたの?」
すっとんきょうな声を出すマスター。
「武藤さん、この3人を相手に勝負してもらいます。あなたの腕が錆びついていないか試させてもらいます。」
武藤は、軽い足取りで席に着き対局が始まった。
3対1の圧倒的に不利な状況で武藤はどう打つのだろう?
周りの人間は興味津々だ。
淡々と場は進む。
何事もないように淡々と。
特に見せ場もないような対局が続く中ただ一人、武藤の後ろで見守っていた観月だけは心の中で唸っていた。
(凄い読みだ。まるで全てが透けて見えているかのようだ。衰えを全く感じさせない。)
一定のリズムで牌をツモり、切る。
リーチがかかろうが、何事もなかったかのように変わらない。
徐々に差が付き焦りの色を隠しきれない3人の男たち。
武藤の親リーが入った。
一人がかなりへこんでいて無理が出来ない。
ほかの二人も手が出来てなくオリ気味だ。
数順のち武藤がツモった。
メンタンピンツモ、ドラ1で満貫。裏が乗れば跳満で一人が飛ぶ。
武藤は席を立ち、「カンが取り戻せてない。東京に戻ったらすぐに相手を用意しろ。」
「分かりました。」
観月がニコッとほほえむ。
「おい、ちょっと待て。何席を立ってるんだよ。早く戻れ。」
苛立たしげに男が声を荒げる。
「早く裏めくれよ。」
もう一人の男もだ。
「お前ら裏くらい読め。」
武藤は振り向きもせず店を出た。
あっけにとられる3人の男たち。
「おい、聞いたか?裏くらい読めだとよ。」
「そんなもん分かるわけねーだろー。」
「何かっこつけてばっくれてんだよ。」
大笑いの3人の中、観月はそっと裏ドラをめくり、そしてニコッと満面の笑みを浮かべた。 


[ 2016/06/16 ] 小説 | TB(0) | CM(0)