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星くずの夜(2.12)

運命の最終戦が始まる。
一番人気は小池だ。
前局の結果を見れば当然だろう。
流れは完全に傾いた。
武藤は、この困難を乗り切れるだろうか。
神のみぞ知る。

沢村が、東パツの親番だ。
武藤は、最早優勝の目はないため小池を勝たせるためだけに集中する沢村をかいくぐり
流れを引き戻すことが勝利への最低条件だ。
やるしかないだろう。

沢村は、親なのに攻める気配がない。
巧妙に場のコントロールに専念する。
武藤は、完全に抑え込まれている。
美里は、前局の影響が残っているもようなのが捨て牌から推察される。
そして、小池がサクッと安手で場を流す。

次局、親番が武藤に回ってきた。
ここで、少しでも挽回したい。
配牌は、上向いて来ている感じだ。
希望が見えてきたと思った矢先
ここで突如、沢村が動いた。
狙いは武藤の親を流すことのみの先制攻撃だ。
完全に虚を突かれた武藤は、出遅れてしまった。
一手差で、追いつけない。
痛恨のミスで親を流されてしまった。

東3局の美里の親番。
武藤は不調の美里を援護しようとするが、沢村も小池を動かす。
美里と小池の運の量が違いすぎるのが決定打だ。
またもや、沢村によって武藤の仕掛けを阻止される。

東4局小池の親番。
流れは完全に小池優勝と言ったところだろう。
しかし、武藤は諦めない。
少しでも可能性があるなら全力で勝負する。
それをあざ笑うかのような小池の打ち筋。
運が違いすぎる。
楽に小池にあがられてしまった。
最早これまで、勝負はついた。
「武藤、無駄な足掻きはやめろ。もう終わったんだよ。お前の負けだ。」
小池は、めんどくさそうに言う。
「オレは、自分の信念に従って勝負をしている。自分を裏切らない者は誰にも負けない。」
武藤の目からは、嘘偽りは感じられない。
「くっくっく、勝負は結果が全てだ。負けてゴミになれ。」
小池の見下した物言いだ。
美里と沢村は何も語らない。
そして、南場に入る。

武藤は、先ほどの発言通りに沢村に挑んで行く。
微塵も妥協のない本物の勝負師の打ち筋だ。
だが、何も起こらなければこのまま終わるだろう。
そこで、優勝には手の届かない沢村がリーチをした。
場の空気が変わる。
「勝負に勝つために専念するのが普通なんだろう。
俺は、バカなのかもしれない。だが俺は、武藤さんに負けるわけには行かない。」
沢村が本音を吐いた。
「このクソガキが」
小池の怒りが尋常ではない表情でうかがえる。
沢村は、ツモ上がり遂に流れが変わった。
ここから、初めて4人による信念の勝負が始まる。

勝負事において流れと言うものは存在する。
理屈は分からないが確かにある。
その証拠なのが武藤と美里の打ち筋に如実に表れた。
沢村の親番を武藤が蹴り、美里の親の連荘。
そして、親の小池に追い打ちをかける沢村の上り。
勝負はオーラスに持ち込まれた。
4人全員にトップ目があり、この勝負に勝つことのみだけに全てを注ぎ誰も大会の優勝など眼中にない。最早、そんな事など関係がない。
各々、生き方も考え方も違うが勝負において負ける事だけは断固拒否する。
一打一打に誇りを込めて打ち続け
小池、沢村、美里の順にテンパイする。
そして、遅れたが武藤もテンパった。
満貫を上がらなければならない武藤は、役なしのドラ3テンパイ。
当然リーチをかけるべきだが動かずそのまま流す。
誰かが上がれば全てが終わるのに、何かを待っている武藤。
そして数順後1ピンを大ミンカンする。
カンドラは乗らない。
武藤の狙いはリンシャンツモのみ。
運命に足掻く者だけに光明が射す。
「ツモ」

対局が終わった。
勝者も敗者もいない。
ただ、己の信念に従っただけだ。
そして、4人以外はギャンブルの魔物に裁きを下される。
一攫千金を手にした者。
全てを失い破滅した者。
運良く生き延びた者。
そして、魔物に食い殺される様子を見て悠々楽しむ者。
ギャンブルの後に見られる相変わらずの光景だ。

卓から4人はまだ離れていない。
余韻を味わうでもなくなんとなくその場にいる感じだ。
「全くお前は大した奴だよ。二度と打ちたくないぜ。」
小池の武藤への最大限の賛辞だ。
「オレもだよ。」
武藤が返す。
「さて、そろそろ引き上げるか。」
小池は、去り際に武藤に何かを耳打ちする。
「沢村行くぞ。」
「俺はあんたとは手切れのはずだが?」
「助かりたかったら、付いてこい。」
沢村は何かを感じ取って、小池の後を追う。
「美里、オレ達も早くここを離れるぞ。」
「あたしは行かない。」
美里は頑なな態度を崩さない。
「オレを信じてくれ。」
「・・・」
武藤が差し出した手を美里は握った。

4人の姿が見えなくなってから少し経ったころ何やら、入り口付近が騒がしくなった。
「サツだー。ガサ入れだー。」
怒号がひしめき合う中、大人数の警察関係者がなだれ込んできた。
現場は阿鼻叫喚の地獄絵図と言ったところだろう。
無駄な抵抗を試みる者。
茫然と立ち尽くす者。
どちらも待っているのは地獄のみ。
ギャンブルに魅入られた者たちの楽園、ヘブンズドアは終わった。
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[ 2016/09/15 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

星くずの夜(2..11)

会場では、着順予想でかなり荒れていた。
美里が2連勝をするとは予期していなかったからだろう。
想定外の展開に、怒号まで飛び交っている。
一番人気に躍り出た美里だが、何もわかっていない。
これから美里は、苦戦をしいられるからだ。
ここで、真に怖いのは沢村だ。
場をコントロールする能力に長けた沢村によって破壊力のある小池が自由に動かれたら手に負えなくなる。
だが、小池をアシストすることに専念している鉄壁の沢村を攻略できるだろうか。

天王山の戦いが始まった。
オレの配牌はマンズのホンイツ気配だ。
まずいことになった。
牌が偏っている。
小池に、他の色が集まっている可能性がある。
案の定、見え見えのピンズの染め手だ。
小池に小細工は一切必要がない。
ただ、上りに一直線に向かえばいいだけだ。
オレも仕掛けたいが、沢村から有効牌がこぼれるとは思えない。
「ポン」
沢村が絶妙なタイミングで小池を鳴かす。
そのまま満貫をツモられてしまった。
その後も、沢村に場をコントーロールされてしまう。
ひたすら勝利のみを求めた冷徹な打ち筋だ。
つけ入る隙が全くない。
小池は苦も無く3連荘だ。
オレが沢村を攻略する前に勝負が決まってしまう。
美里にまだ力が残っているか・・・
東一局4本場が始まった。
ここが勝負所なのは全員が分かっている。
オレは、多少強引なことをしてでも流れを変えたい。
それを阻止しようとする沢村。
この構図が一向に崩れない。
その時、待望の美里の先制リーチが入る。
待ちは、マンズの下か、ソウズの上かどちらかだろう。
現時点では判断出来ない。
下手なことをするべきではない、ここは美里に任せるべきだな。
オレは、見に決め込むことにした。
だが、小池は無筋を平然と切る、全ツッパ。
弾幕の嵐の中をまるで気にかけずに歩くかの様だ。
そして、どちらの運が強いか試すような小池の追っかけリーチだ。
美里と小池の一騎打ち。
事の成り行きを見守る事しか出来ないのが歯がゆい。
打牌の音が、運命のカウントダウンに聞こえる。
「ロン」
美里が、小池に放銃してしまった。
手牌は何とただのリーのみ。
「くっくっく、どうやら運が向いてきたようだな。」
小池の勝利宣言だ。
勝負はついた。
その後は防戦一方の消化試合。
美里にいたっては、その後も小池に振り込み、ハコる寸前にまでなった。
オレは、何とか沢村の網をかいくぐり2着に滑り込んだ。
会場は、ますます大荒れになった。
本命の美里のまさかの失速と、小池の台頭。
点数的にはオレにも優勝の可能性があるにはあるが流れは小池だ。

最後の休憩時間に入る。
控室では上機嫌な小池が沢村に話しかける。
「全て予定通りだ。武藤には、お前が付いている。後は美里をゆっくり料理するだけだ。」
「そうだな。」
「何だ?気に入らないのか?」
小池が、ヤクザもビビる異様な迫力で沢村を睨む。
「あっけなく終わったのが物足りなかっただけだ。」
「お前、余計なことをするつもりじゃないだろうな?」
「俺とお前は似ても似つかないが一つだけ共通点がある。負けることを何よりも嫌うことだ。
俺は、あの人に負けたくない。」
「くっくっく、勝負事で負けたらゴミだからな。」
小池は、ロールケーキを手づかみで食らいつく。
「負けたら、ゴミか・・・」
沢村は、つぶやいた。



[ 2016/09/12 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

星くずの夜(2.10)

2回戦が始まった。
さて、状況はオレにかなり不利となっている。
先ずは、美里の独走を止めなければ。
親番の美里を連荘させないこと、それだけの為に打つ。
手牌は、役牌で行くかタンヤオで行くか悩ましい牌勢だ。
どちらでも行けるように1ピンの対子落としをする。
食い仕掛けをするつもりだが、上りは厳しそうだ。
小池か沢村に差し込む事も視野に入れる。
8順目に、早くも美里から先制リーチが入る。
オレは対子の中を切る。
それを、小池がポンをする。
数順後、ツモった3ピンを小池に差し込む。
3900点の振込だが致し方がない。
美里の猛攻をオレがしのぐ展開が続き、それを小池と沢村は高みの見物だ。
どうやら二人は徹底して持久戦で行くようだ。
オレの親番までしのぎきるしかない。
しのぐと守るは違う。
隙あらば反撃する攻撃的な打ち方だ。
オレは、しのぎに自信はあるが勢いに乗る美里を止めるのは至難の業だ。
元々オレ達の雀風は正反対なので持久戦になりやすい。
お互いに、全神経を張り巡らせる消耗戦の様子を呈してきた。
それにしても、いつも以上に攻撃的な美里だ。
少々の手損は承知の上で怪力でねじ伏せようとしてくる。
しのぎ切れるか・・・
ダムの水が決壊しそうな危うい状況が続く。
とにかく、しのいでしのいでしのぎ続ける。
やっと親番が回ってきた。
しかし、配牌は一向に良くならない。
安手を一回上がるのが精いっぱいだった。
その後も、終わりの見えない攻防が続く。
美里が、これ程の打ち手になるまでにどれだけの夜を過ごしたのかオレには分かる。
2回戦も美里がトップに立った。
オレ達は、正に青息吐息ってやつだ。
後半から、力を溜めて温存していた小池と沢村が仕掛けてくるだろう。
狙いはもちろん美里だ。
小池は、剛腕でねじ伏せるタイプ。
沢村は、冷静に場に合わせるタイプ。
考えうる限りの最強のコンビだ。
この二人のコンビ打ちを美里は防ぐことは出来ないだろう。
美里が崩れたら、流れが劇的に変わる。
それを阻止したいが、オレにはそんな余裕はない。
状況は悪くなる一方だ。
何かを起こさなければならないが、あの二人にそれを期待しても無駄だ。
オレが、策を練っているところに招かれざる客がやって来た。
観月だ。
「武藤さん、大分追い詰められていますね。」
「今回はお前の思惑通りになったな。」
「ええ。でも、このままでは楽しくないので朗報を持ってきました。」
「信用は出来ないが聞いておこう。」
「あの二人は必ずしも一枚岩ではありません。」
「根拠は?」
「沢村さんは、あの時あなたをだまし討ちした事を今でも、非常に後悔しています。
今回も小池さんと組む事には不本意なようです。小池さんも、沢村さんの事を信用しておらず
常に警戒しています。信じるかは武藤さんにお任せします。」
「相変わらず、何がしたいのか分からないやつだがその情報は信じよう。
お前を楽しませることになるのはしゃくだがな。」
「幸運をお祈りします。」
観月は楽しくて仕方がない様子で消えた。
勝機があるとすればそこだけだな。
オレは、僅かな可能性に賭けてみることにした。



[ 2016/09/03 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

星くずの夜(2.9)

今夜も、ギャンブルの信者がここに集った。
ギャンブルと言うものは恐ろしい。
自分だけが勝つと信じきっているからだ。
負けることなどこれっぽっちも考えていない。
結果は朝までに決まる。
朝までに・・・

決勝は、半荘4回戦の合計得点で決まる。
半荘ごとに15分間の休憩を挟む。
もちろんこれは、対局者を気づかってのものではなく、
更に金をふんだくろうとする、ヘブンズドアーの意図だ。
ギャンブルに付き物の着順予想も行われる為、半荘終了時に莫大な金額が動く。
濡れ手に粟とはこのことだろう。
一番人気は、武藤。対抗は小池となっている。
アナウンスが客を煽り、4人が登場すると大歓声だ。
場決めが行われ、東家、武藤 南家、美里 西家、小池 北家、沢村となった。
運命を決める戦いが始まる。

まずは、一回戦と言うこともあり、武藤は様子を見る。
小池と沢村も同じく様子見だ。
美里だけ、いきなり全開スタートだ。
積極的に仕掛け、場をリードする。
東場終了時まで、小池と沢村は一切動かない。
どうやら、美里を泳がせ弱ったところに食いつこうという腹なのだろう。
そうなると、コンビ打ちの二人に合わせることは武藤にとってはマイナスとなる。
仕掛けざる負えない。
武藤は、美里に真っ向から立ち向かう。
お互いの手の内を知り尽くしている二人だが、武藤には空白の時間がある。
その間、修羅場を潜り抜けてきた美里に対抗するには経験と勘だけが頼りだ。
互角の展開が続いていると素人目には映るであろう。
だが、プロの目からは武藤が厳しい。
ミスともいえないほんのわずかな齟齬が生じている。
点棒には、現れない差が積み重なるといつか破たんする。
ここはまだ勝負所ではない。
武藤は、修正するための打ち回しに専念する。
美里のダントツのトップで一回戦は終了した。

15分間の休憩が与えられた。
会場では、金が飛び交う乱痴気騒ぎだ。
勝者と敗者がこれほど分かりやすい画もないだろう。
各々事情は違うが、勝つか負けるか二つに一つ。
これだけはすべての人間に平等である。

武藤は、控室で己の状態を再確認している。
どこがいけなかったのか?
凡人はあそこであれを切ればよかったなどと思い悩むのであろう。
武藤は違う。
自分の体に問いかけるのである。
自然な動作で澱みなく打てたか?
無駄な動作はなかったか?
体の隅々にまで問いかける。
こちらの方はどうとでもなるが問題は対局状況だ。
美里の独走を許してはならない。
しかし、小池と沢村は動かない。
武藤は、3人を相手に一人で現状を打破しなければならい。
何か策はあるのであろうか?
なければ待っているのは敗北である。
足掻くしかないだろう。
武藤は、戦いの場に戻った。
[ 2016/09/01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)