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欠片を求めて(3)

病院の近くにあるモールの雑貨屋ピエロで、物色中の平木。
看護師の玉木からの思わぬ情報でここに来たが、何を買えばいいのかさっぱり分からない。
あれこれと手に取ってはみるが、どれもいまいちだ。
ふと、周りを見ると、あの時の少女がいる。
向こうも気づき、こちらに向かってくる。
「こんな所で何してるの先生?」
笑顔をたたえているがどこかさびしそうな印象を受ける。
「ちょっとプレゼントを買いにね。」
「ふーん。子供にあげるみたいね。」
「実は、あづみちゃんの誕生日プレゼントを買うつもりで来たんだが、困っているんだよ。」
少女は、くすっと笑った。
「あづみちゃんはクマのぬいぐるみが好きみたいよ。部屋に飾ってあるんだって。」
「クマか。邪魔にならない程度の大きさのを買っておくか。」
平木は、手ごろな物を選び、少女に見せる。
「それがいいと思うよ。」
「助かったよ。ところで君はあづみちゃんとはどういう関係?」
「ボランティアで、来てるだけ。あの時が初めてだからよく知らない。」
「そうなんだ。今度会ったら、飲み物くらいはおごるよ。」
「楽しみにしてるわ。」
少女は、そう言い残して店を出た。

桜井から、大量の雑務を言い渡され忙殺された疲れを癒すために中庭のベンチに腰かけている平木。
「平木先生ー」
そこに、玉木が笑顔でやって来た。
「あづみちゃん、すごい喜んでいましたよ。直接渡せばよかったのに。」
「手話を少ししたくらいの間柄だからね。玉木さんから渡してもらった方がいいと思ってね。
それに、桜井先生に知られたら何を言われるか分かった物じゃないからね。」
平木は、肩をすくめた。
「桜井先生、鬼のように怖いですもんね。」
玉木は、桜井を思い出し顔を強張らせる。
「そうだね。ところで、ボランティアに肩くらいの髪の長さの女の子が来てるようだけどよく来るの?」
「うーん、肩くらいの女の子か・・・誰だろう?」
玉木は、眉間にしわを寄せ思い出そうとしている。
「見当がつかないならいいよ。」
「ごめんなさい。私、記憶力悪くて。」
玉木は、舌をペロっと出して悪戯っ子ぽい笑いをする。
「それじゃあ、ボクは地獄の閻魔様の所に行ってくるよ。」
平木も、舌をペロっと出したので玉木は、大笑いした。
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[ 2016/11/30 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

欠片を求めて(2)

「平木~どこほっつき歩いてた。私は忙しいんだ。」
「すみません。」
「平山さんの様子を見て来い。術後の経過はいいが一応な。」
「え、桜井先生が見るのでは?」
「私は忙しいと言ったぞ。同じことを二度言うのは無駄だ。雑魚は雑用してればいいんだよ。」
「直ぐに行ってきます。」
平木は、逃げるように部屋を出た。
この30半ばの眼鏡をかけた眼光鋭い口の悪い女が平木の直属の上司、桜井京子だ。
そして、何故か美人だ。

勤務を終えた宮は、後輩看護師の玉木絵里子と居酒屋で談笑中だ。
酒の入った席での、看護師同士の会話など医者か患者の悪口と言うのが相場だろう。
例のごとく、宮は玉木の愚痴を聞かされていた。
「あー、宮本ムカつくわー。毎日あいつの顔を見るくらいなら、転職しようかな。」
「看護師は、腕一本で生きてく仕事だからねー。転職してみる?」
「今の職場は気に入ってるんでー。しばらく続けてみます。」
玉木は、ビールを一気に飲み干した。
「そうそう、今日、平木先生が手話で女の子と話してたの。
多分、小児病棟の子だと思うんだけど何か聞いてない?」
「あー、あづみちゃんが言ってた医者って平木先生の事だったんだー。
にんじんが、嫌いらしいですね。」
「そんなこと話してたんだ。」
「平木先生、ルックスいいからあづみちゃん気にいってましたよ。」
「そうなんだ。あの人、女性に人気あるからね。」
「宮さんも、ぐずぐずしてられませんねー。」
玉木は、うれしそうに話す。
「そう言うのないから。ただの同僚よ。」
「そういう事にしておきますか。」
玉木は含み笑いを浮かべた。
[ 2016/11/24 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

欠片を求めて(1)

都内にある大規模病院の食堂で塩っ気のない定食を食べる、平木圭と宮エリ。
毎日ヘルシー料理が食べれてうらやましいと思うのは最初だけだろう。
禁断のマヨネーズたっぷりの中毒ポテサラが食べたくなるはずだ。
マヨラーにとっては、ここの食事は苦行以外の何物でもない。
もっとも、平木と宮はマヨラーではないが。

「今日も、桜井先生にたっぷりしごかれたよ。」
平木は、苦笑いを浮かべる。
「桜井先生は、厳しいからねー。よくもってると思うよ?」
宮は、くすくす笑う。
「あの人は、ボクに、やたら厳しい。」
「そんな事ないよ。前の人なんて3か月もたなかったからね。
優しい方じゃない?」
「皆が、ボクがいつまでもつか、話題にしてるのは知っているが、恐ろしい事言うなよ。」
「私は、期待してるよ?」
「どういう期待かは聞かないでおくよ。」

会話の途中で、平木の視線が一人の幼い女の子に注いだ。
女の子は、どうやらニンジンを食べたくないようだ。
もう一人の、10代後半あたりの少女が何とか食べさせようと奮闘中だ。
それを見ていた平木が、おもむろに行動する。
二人が何をやっているかは誰が見ても分かるが。
何を話しているのかは限られた人間にしか分からない。
(にんじん食べたくないの?)
平木が女の子に話しかける。
(うん。)
女の子が答える。
(ボクも食べるの苦手なんだ)
(大人なのに好き嫌いしちゃだめだよ)
強烈なカウンターが返ってきた。
(隣の人は彼女?)
平木は、宮をちらりと見て友達だと答えた。
女の子は、少女に手を引かれて立ち去った。
「平木先生、手話なんて出来たんだ?」
宮は、意外だと言う表情だ。
「昔、少しだけ勉強したんだよ。手話なんて何年振りだろう。」
「特技があると何かしら役に立つことあるのね。」
「何か勉強したら?」
「この仕事してたら、そんな時間なんてないよ。」
「そうだね。」
「そろそろ戻らないと、桜井先生の雷落ちちゃうよ?」
「まずい、それだけは勘弁してくれ。」
平木は、慌てて席を立つ。
「廊下は走らないようにね?」
宮の言葉を無視して早足で桜井の元に向かった。



[ 2016/11/22 ] 小説 | TB(0) | CM(0)