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欠片を求めて(5)

当直の疲れを癒した平木は、病院に戻る。
桜井は、情け容赦なく激務を平木に課すだろう。
さあ、地獄の日勤の始まりだ。


体力に自信のある平木だが、こういう時に限って患者が殺到する。
看護師も忙しく動き回り、正に戦場の体と言ったところだ。
あちらを立てればこちらが立たず、やっと収まったと思ったら
桜井から、鬼のように指示が飛ぶ。
無心に業務をこなし続け、夕方になり待望の食事にありつくために
食堂に向かう平木は、またしても少女に捕まってしまった。
「先生、すっごい疲れた顔してるね。」
「地獄から、生還したばっかりだからね。」
平木は、ヘロヘロになりながら答える。
「先生これから食事なんでしょ?」
「あの味気ない食事も、空腹にはごちそうだよ。」
「疲れたときは、甘いものが一番。外に食べに行こうよ。」
「甘いものか・・・」
平木の、心の迷いを逃がさないかのように腕を掴み引っ張る。
「さあ、行こう?」
平木は、なすすべもなく連れて行かれた。


おしゃれなインテリアに囲まれた、レストランでの食事に大満足の平木。
こんな近くに、あるとは知らなかった。
だが、値段が割高なのが唯一の難点だ。
少女は、幸福を絵に描いたようにデザートをほおばっている。
「このデザート前から食べたかったんだよねー。先生見つけてラッキーだった。」
「わざわざ一番高いのを選ぶとはね。」
「収入は十分もらってるんだから使わないとね。」
「まあ、忙しすぎて使う暇もないけど・・・」
「先生、何で医者になったの?」
よくある質問だ。
「特に理由はないよ。君こそ何故ボランティアを?」
「私も、特に理由はないよー。」
「そうか。良いことに理由なんて特に必要ないしね。
さて、そろそろ戻らないと雷が落ちる。出よう。」
店を出た二人は、軽く別れの挨拶をして別々の道を行った。


帰るなり平木は、桜井から大量の資料を渡される。
「平木〜私は、小用が出来た。さっさとこれをまとめておけ。」
「これを全部ですか?」
「半人前のお前には、雑務がお似合いだ。文句があるのか?」
「何もありません。後は、任せてください。」
桜井の後ろ姿から、大量の資料に目を移し、途方に暮れる平木だった。
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[ 2016/12/07 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

欠片を求めて(4)

平木は、当直の合間にコーヒーを飲みに自販機に向かう。
自販機の前には、先客がいる。
脳外科医の、沢井マサキだ。
「今日は、当直か?」
「はい、今日は、のんびり過ごせてますよ。沢井先生は?」
「気になる患者がいてな。用は済んだから、もう帰るがな。」
「沢井先生に、執刀してもらえれば患者も安心ですよね。」
沢井は、何も言わずコーヒーを飲みほし
「何でも治せる医者なんていない。」
そう言って立ち去った。
後に残された平木は、沢井の言葉をはんすうして立ち尽くしていた。

「平木先生?」
机に肘を着き顎を支えたまま動かない平木に
宮が、大丈夫この人と言った感じで声をかける。
「あ、ごめん。何かあった?」
「何もないけど、いつも以上にボケッとしすぎ。」
「いつもって・・・」
「そんなんだから、桜井先生の雷が落ちるのよ。」
痛いところを突かれる平木。
「桜井先生って何であんなに厳しいんだろうね?」
「さあ、私はここでの勤務は短いからね。本人に聞いてみたら?」
「出来ないこと言うなよ。さて急患が来るまで寝てるから後よろしく。」
大胆と言うか、時に平木は、二面性があるように思われるときがある。
だが、そんな所が平木の魅力であるのも事実だ。

当直を終えた平木は、公園を散歩している。
この公園は、平木のお気に入りの場所だ。
木々に囲まれると体の芯から洗い流されてるような清々しい思いがする。
「こんな所で何しているの?」
突然後ろから少女が話しかけてきた。
「何だ君か。労働の疲れを癒しているんだよ。」
「この前飲み物をおごってくれるって言ったよね?」
「あーそんな事もあったね。」
「もう、忘れてたな?約束は守らないとだめだぞ。」
「近くに自販機はないけど。」
「もういいよ。」
少女は呆れ顔だ。
「高そうなカメラだね。」
少女が、手にしているカメラを指さす。
「そうでもないよ。値段はそこそこだけど性能には満足してる。」
「写真かー。ボクにはセンスが無いから縁の無い物だけどね。」
「じゃあ、試しに私を撮ってみてよ。」
少女は無邪気に笑う。
「え、そんなの無理だよ。下手すぎて見せらんないよ。」
「いいからー。早く撮ってよ。」
少女は強引に平木にカメラを渡す。
困惑しながらも、仕方がなくシャッターを押す。
「どれどれ、うっわーホントにセンスないね。」
クスクス笑う。
「悪かったな。もう帰るぞ?」
分かってはいても、面と向かって言われて平木は機嫌を損ねた。
「あー怖い。じゃあ、またねー。」
少女は、風のように去って行った。

[ 2016/12/02 ] 小説 | TB(0) | CM(0)





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