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宇宙の忘れ物(8)

「山崎久しぶりだな。」トイレから出てきた男の背中に向かって発した。

男は振り返った。

「私は井上ですが、誰かと勘違いしてるのでは?」

「顔を変えたところでボクの目は誤魔化せないぜ。」

男は何の事だかさっぱりと言った表情だ。

「お前がトイレに入った後の洗面台の汚さを思い出したよ。

人違いだったら悪いが付き合ってもらうぜ」

「全くお前は頭が切れるんだか間抜けなんだか分からん奴だ。」

男はくっくっくっと笑った。

「ここでボクと出会った自分の運の無さを呪え」

山崎に近づこうとしたときだ。

「ここに核を隠している」

ボクの歩みを止める言葉を発した。

「はったりは止めろ」

「信じる信じないはお前の自由だがな。」

お互いに決め手を欠いた膠着状態だ。

「おい、おめー何やってんだよ。」シェリーが走り寄って来た。

「知り合いか?こんなとこで男同士見つめ合ってキモイわ」

「こいつは山崎だよ」

「寝ぼけんな顔が全然違うじゃねーか」

「整形してるんだよ。それと大人しくしていてくれ。」

「はぁ?どー見たって山崎じゃねーじゃんか」シェリーが不用意に山崎に近づいた。

一瞬でシェリーの体を引き込むと首にペンを当てた。

「これで形勢が変わったな」山崎はシェリーの首にペンを突き刺しボクに投げつけた。

動脈は外れているが出血が激しい。

大声で医者を呼べと叫び、応急手当を施す。

山崎はその間に見失ってしまった。



シェリーは命に別状はなかった。

空港に核はなく山崎のはったりに騙されたと言う事だ。

シェリーが回復するまで暇が出来たし山崎に借りを返しに行くか。

ボクの勘が正しければ山崎は感謝際を狙うはずだ。

それまでに奴を捕まえる。先ずは情報収集だ。

また深雪の世話になる事になるのか。



また公園のベンチに座っていた。

向こうからは深雪がやってくる。

これで何度目だ?デジャブかと思うぜ。

深雪はいつもの様に隣に座る。

「山崎は最初から核を持っていなかったんじゃないのか?」

「ええそうよ」

「その情報はいつ掴んでいたんだ?」

「最初からよ」

深雪は顔色一つ変えずに答える。

「そうか。全部仕組まれていたんだな」

「そう。政府は核がないのを承知していてテロリストをこの機会に一掃しようとしたのよ。

私はそれを阻止する為にあなたを利用した」

「山崎の目的は?」

「それは分からないわ。あなたに隠していた資料を渡しとく」

深雪は封筒を渡した。

「これでもう何も隠していないんだな?」

ボクは深雪に念を押す。

「ええ、もうあなたに嘘はつかないわ」

「山崎に何があったか知らないし、政府の陰謀も関係ない。

ボクは山崎に借りを返すだけだ」

今回はボクが先に席を立った。

「これで本当のお別れだ」

桜を見てもこれからは何も想わないだろう。

この季節に特別な感情を抱いていたのも今日までだ。








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[ 2014/01/01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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