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宇宙の忘れもの(完)

地球に戻って一週間。連日こき使われ死にそうだ。

誰かがボクの体を激しくゆする。頼むから寝かせてくれ。

三日も寝てなかったんだ。起きるくらいなら死んだ方がましだ。

絶対に起きないぞ。諦めろ。

髪を掴まれ顔面を机に叩き付けられた。

ぐしゃっと言う音が聞こえそうなえげつない起こし方だ。

「グッドモーニーング」シェリーの無邪気な笑顔と対面だ。

「メシ食いに行くぞ。」ボクの襟首を掴むと強引に立たせた。

「もちろんお前のおごりだけどな。」







シェリーのリクエストで少し離れた高級レストランに向かう。

退院祝いに贅沢な物でも食べたいのだろう。

値段の高さに眠気も覚め車を飛ばす。

横目にシェリーを見る。首には絆創膏が貼ってある。

「怪我の方は大丈夫なのか?」

「あぁ、もう平気だよ。」首に手を当てながら答える。

「テロも未然に防げたしハッピーエンドだな」

「ハッピーエンド?何も知らない奴は幸せだぜ。」

ふっふっふっと笑う。

「山崎の最後は知らないだろ?雑魚のお前の為に特別に教えてやるよ。」

得意満面だ。

「いいか?山崎はなー狙撃されたんだよ。500メートル離れたところからな。

500メートルだぞ?しかも眉間を一発でズドンだ。」

人差し指を眉間にトントンと当てる。

「あっさりあの世送りだぜ。」

あっさりねー。

「狙撃手の正体は分かってないが恐らくコードネームミケランジェロってやつらしい。

他にこんな事出来るやつはいないだとよ。ちょーすげーよな。まさに神のごときってやつだな」

シェリーは興奮して一気にまくしたてるがボクは我慢しきれずに大あくびをする。

「何だよ。興味ないのかよ。」

不機嫌なシェリー。

不味い。

「いやいやーほんと凄いわ。その達人に教えをこいて射撃の腕を上げたいね。」

ふっと鼻で笑うシェリー。

「おい、おめーの実力を知らないとでも思ったかー?あー?」

にやけながらボクの顔を覗き込む。

「大学時代は毎年代表選手として活躍したさ。」

「万年入賞止まりのセンスの欠片もねーカスが何言ってやがる。」

あははははー大笑いだ。

「お前が毎年防衛大の代表なんてミラクルだわ。ありえねーよ。全ての運使い果たしたな。」

だははははー笑いが止まらないようだ。







波風が気持ちいい。コンビニに寄って買ったパンを千切って空に投げる。

カモメがナイスキャッチだ。

レストランから近いからとシェリーにせがまれ仕方がなく来たが案外楽しんでいる。

「海辺の別荘とかあったら毎日海で遊べて楽しそうだよな?」

「そういうのあきたわー」

「飽きた?まるで経験済みみたいな言い方だな。」

「毎年マイアミの別荘行ってりゃあきるに決まってるだろーが」

「え?高級リゾートのマイアミビーチ?」

「ほかに何があんだよ。」

「お前金持ちなの?」

「ちげーよ、大金持ちだ。大が付くんだよ大が」

「ちょっと待て。そんなやつが何でCIAにいるんだよ」

「退屈しのぎに親父に頼んだんだよ。」

「そんな事出来るのか?」

「お前なー金さえあれば大抵のことは出来るの知らねーのかよ。」

こっちは命がけで必死だったのにわがままお嬢様のお遊びの相手をしていたのか・・・

「どっと疲れが出たわ。休暇でも取ろうかな。」

「マイアミの別荘にでも来るか?」

「マイアミか。貸してもらえるなら行きたいな。」

「ターコ誰が貸すって言った。一緒に行くんだよ。」

「せっかくの休暇をお前と過ごせと?」

「お前がいなくちゃ退屈だろうが。あたしを楽しませるのがお前の役目だ。」

当然のごとく答える。悪びれた感じが全くない。

こいつがおかしいのか女が皆おかしいのか分からない。

「二人一緒に休暇取れるかな?」

「あたしに任せな。」

こいつが小細工をするとは思えないからおそらく・・・

この先を考えるのは止めよう。

「もう帰るぞ」回れ右をし早足で来た道を戻る。駐禁が心配だ。

「もー帰んのかよ」まだ遊び足りないと言った感じで文句を言う。

子供の相手をするのは疲れる。さっさと先を急ぐ。気配で付いてきているのは分かる。

「死ぬまであたしを楽しませてくれよな」

「は?今なんか言ったか?」振り向きざまに答える。

「何でもねーよ、ボケ。」肝心な時に勘の働かない奴だと呆れるシェリー。

二人は黙ったまま砂浜を歩き続ける。付かず離れず微妙な距離を保ちながら。

マイアミの日差しはきついだろうが一生これより強烈な日差しを浴び続けるよりはましだろう。

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[ 2014/04/18 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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