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もう一度(7)

「王手」こぎみのいい音を鳴らして宣言した。
「いやー相変わらず晋ちゃんは強いわ」
中年男が苦笑いを浮かべながら答える。
ここは将棋道場。
子供の頃よく通った所だ。
自慢だがオレは7段だ。
もっとも、ネットなので正式ではないが。
「また来るわ」
おっさんどもをボコり気分よく後にする。
さてこれからどうしようかと信号待ちに思案する。
ふと、となりの電柱に目をやると犬の写真が貼ってある。
迷い犬、八月一日、間違いなくハチのことだ。
携帯番号の脇に八月一日と書いてあるってことはどうやら名字のようだ。
オレはスマホを取りだし番号にかけてみる。
数回コールしたら出た。
「はい、はっさくです」女性の声で返事が来た。
「すみません、間違えました。」
まったく間違い電話とは間抜けだ。
今度は慎重に番号を確かめる。
またもや、さっきの女性にかけてしまった。
オレは、もしやと思い聞いてみる。
「あの、八月一日と書いてはっさくと読むんですか?」
「はいそうですが」
なんて間抜けなんだオレは。八月一日と読む名前なんてあるわけねーだろ。あらかじめ調べておくんだった。
オレは自分の無能さにへきえきした。
「すみません、読み方がわからなくて」
「いえ、いいんです。珍しい名前ですから。ところでどの様な御用件でしょうか。」
オレは張り紙を見たことと保護してることを伝えた。
「本当ですか?心配してたんです。ハチが戻ってこなかったら私立ち直れなかった」
安堵の様子が伺える。
「ハチって名前なんですね」
偶然にも同じ名前を付けてたのか
「はい、単純ですよね」
くすっと笑いながら答える。
オレが迷いに迷った名前が単純。。。
しばしショックで言葉がでない。
「あのう、どうかしました?」
「いえ、なんでもないです、それよりハチはいつ渡せばいいですか?」
「出来るだけ早い方がいいです。いつでも時間を開けます。」
暇をもて余しているオレは相手に合わせるつもりだったが意外に家が近いことと早く会わせたかったのでこのあとどうかと提案したらすんなりOKが出た。
「じゃあ、天沼公園で待ち合わせで」
「はい、なるべく早く行きますのでよろしくお願いします」
通話が終わり、家の方向に向かう。
ハチともお別れか、短い仲だったな。
出会いの後に別れが来るなら出会わなければ良かったと思うやつもいるだろうが例え一時でも幸せな気持ちになれたのならそれでもいいと思う。

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[ 2015/12/08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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