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もう一度(8)

子供たちの楽しそうな声が公園内でこだましている。
鬼ごっこや、サッカーなど見ていてほほえましい。
まだ女性は来ていないようだ。
ハチとも今日で最後、名残惜しいが仕方がない。
ベンチに腰かけているところにサッカーボールが転がってきた。
ハチが勢いよく駆け出す、油断してリードを離していた。
「あーごめんね、邪魔しちゃったな。ハチ戻るぞ。」
リードを引くがボールから離れようとしない。
「かわいー」子供たちが集まってきた。
次々に頭をなでてみんな嬉しそうだ。
気がついたらハチと一緒にボール遊びに夢中になっていた。
「お待たせしました」
女性が声をかけてきた。振り向くとそこにはフランス人形のような顔立ちの若い女性がいた。右目の目尻にある泣きぼくろがかわいさにアクセントをつけている。
「こんにちは、八月一日さんですね?」
女性は驚いた様子で返事がない。そりゃそうだろ、大の大人が子供とボール遊びしているんだから。
「ごめんなさい、びっくりしちゃって」
おかしくてたまらない感じだ。
「ですよねー、恥ずかしいところ見られちゃったな」
「いいと思います。子供の頃のままで変わらないのは」
ハチが女性に飛び付く。
「ハチー戻ってこれてよかった」
頭をなでて嬉しくてたまらないようだ。
「あ、自己紹介まだでしたね。楢舘って言います。サッカー元日本代表の楢崎の楢に舘ひろしの館です」
「お互い珍しい名前ですね」
うふふと笑う
「本当にありがとうございます。何かお礼をしたいんですが」
「礼なんていいですよ、こっちも楽しかったんで満足してます。」
「でも、それでは申し訳ないので何かさせてください、お茶でもどうですか?美味しいケーキもあるお店を知っているんです」
「じゃあ、ご馳走になります」
甘党のオレはケーキと言う言葉に軽くのせられてしまった。もちろん彼女のかわいさにつられたのも事実だ。

アンコーラと言う店内は飾ってある絵から食器まで全てが調和した心地のよい空間だ。仙一と行った店とは大違いだ。
更にお茶とケーキがめちゃめちゃ美味く文句の付けようがない。
「ほんといい店だなー。気に入っちゃった。美夕さんセンスあるねー」
「そうでしょうか、気に入ってもらえて嬉しいです」
初対面だったが何故か昔からの知り合いだったかのように話が弾む
「ハチのおかげでこんな出会いがあるなんてなー、いいことはするもんだ」
「そうですね、偶然の出会いってありますよね、また会えるか分からないですけど」
微笑みがどことなく悲しい感じがする。
「そうだね、機会があったらまた会おう」
「はい」
やはりどこか引っかかる微笑みを浮かべる。
店を出たオレはハチと最後のお別れをする。
「いつでも連絡してきて下さい」
社交辞令を残し立ち去った。
不思議な娘だったな。
人当たりのよさが初対面を感じさせなかったんだろう。
オレにはまた会いたい人っていたっけかな。
考えてみたがいねーな。
ちゃっかりお土産に買ったケーキを楽しみに家路につく。

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[ 2015/12/11 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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