FC2ブログ

2019 07123456789101112131415161718192021222324252627282930312019 09






もう一度(9)

ゴオオオオル、クリスチアーノ▪ロナウドのFKがネットに突き刺さる。
「マジかよー、なんでお前そんなに強いんだよ。やってらんねえ」コントローラーを仙一が放り投げる。
「ウイイレで負ける気はしないね。わざわざハードを持ってきてまで負けに来るとはな」
「もう止めた。それよりさっきの女の子の話だが相当なお嬢様だぞ」
「お嬢様?」
「八月一日なんて珍しい名前だから恐らくだがいくつも事業展開してる、フランス系の社長の娘だよ」
「お嬢様が柴犬なんて飼うか?不釣り合いだろ」
「知らん、意外と庶民的なのかもよ」
確かにジーンズにカーディガンの着飾った格好ではなかった。ブランド物かもしれないが。
「まぁ、俺ら庶民とは住む世界が違うんだよ。金がないとね」
「金ねぇ、そう言うの飽きたんだよなー」
「何言ってるんだよアメリカで無一文になって戻って来たくせに、じいさんの家が残っただけ運が良かったんだろ」
アハハと大笑いをする。
「じいちゃんの家だけは絶対に手放したくなかったから必死こいて働いたよ」
「それは置いといて絢のことどうするのよ」
「どうするって?」
「衆議院議員の田中公平いるだろ?その一人息子が絢にプロボーズしてるんだわ。地元の名士だから、無下に出来ないんで仕方がなく相手してるらしい」
「へー」
「お前なーそんなんだから上手く行くものも行かないんだよ。サッカー部のマネージャーになったのも東京の専門行ったのも全部お前のためだろうが。」
仙一の言葉にぐうの音もでない。
「とにかく伝えたからな。後は自分で何とかしろ」

翌日、オレはダルそうな足取りで約束の場所に向かう。
仙一が帰ったあと過去を振り替えったら無限ループにはまりほとんど一睡もできなかった。
店内には絢が先に席に付いていた。
「急に呼び出してごめんね。」
「暇人のオレに気を使わなくていいよ」
「雰囲気のいい店でしよ?私のお気に入りの場所なんだっ、晋作こう言う店来たことないでしよ?」
「そんなことないさ」
ふーん、とつまらなそうにする。
そう、こんな店来るわけがない。あの娘と昨日来てなければ。よりによってアンコーラとは神のいやがらせか?
オレ達は当たり障りのない話題に終始した。
少し間が出来たときに絢が意を決したように話し出した。
「私まだバレエを続けてるの」
意外な言葉に面食らってしまった。
「今は本格的にバレエ漬けの毎日なんだっ、親は呆れてるよ」
「美容師は辞めたの?」
「親の手伝いをするだけ、ほとんどやってない」
「銀座のホステスは?」
「今度のコンクールに優勝したら、フランスに留学できるの、だからそのために貯金したくてやってたの」
そう言うことだったのか、おかしいと思った。
「コンクールはいつなの?」
「明後日。。。」
「明後日って急だな。」
「うん、バレエ関係意外には親も友達も知らない。仙一にも話してない、だから、不安で。。。」
「そっか」
「もう一度夢に向かって頑張りたいの、後悔はもうしたくないから」
「。。。」
「コンクールに備えなくちゃいけないからもう帰ろう?」
お互い黙って歩いている。気まずいわけではない。なにを話していいか分からないからだ。
そんな時、重低音を響かせてフェラーリが横付けしてきた。
中から出てきたのは高級なイタリアンスーツに身を包んだキザな男だ。
「絢さんこんなところで会うなんて偶然ですね。」
「田中さん。。。」
こいつが仙一が言ってたボンボンか。
「そちらの男性は?」
「幼なじみの人で久しぶりに会って話してたんですよ」
田中は舐め回すようにオレを見る
「僕が忙しくてなかなか会えずにすみません。今度埋め合わせにご馳走しますんで許してください」
「はい。。。」
「では、僕は父のチャリティーパーティーでVIPのお世話をしなければいけないので失礼します。」
自分はアホですと主張するフェラーリの重低音が痛い。
「あの人のことなんだけど」
オレは話をさえぎり「仙一に聞いたよ。嫌なやろーだったな」
「悪い人ではないんだけど、しつこくて。。。」
「あんなアホほっとけ、それよりコンクールで最高の演技が出来ることだけに集中しろ」
「そうだね、今日はありがとう。気持ちが軽くなったよ」
いつもの笑顔だ。当日はベストを尽くせるだろう。
スポンサーサイト



[ 2015/12/24 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://betabetao.blog.fc2.com/tb.php/48-44d0ab9a