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宇宙の忘れ物(1)

キミが上京して何年経っただろう?
今年も桜の並木道はあの頃のキミの姿を思い出させ、胸の鼓動が未だに断ち切れない想いの証としてボクを悩ます。
今日も明日もこれからも何も変わらない日常が続くのだろう。
さぁ心を殺して機械になる時間だ。
ボクは非常階段でタバコをくゆらしていた。
あの喫煙所と言う名の牢獄で同僚と吸うタバコほど不味い物はない。
やっと一人の時間を手に入れているときに無粋なバイブ音がなった。
履歴には懐かしい名前が表示されている。
影山。
「いよー久しぶりー」あの暑苦しい声が鼓膜を震わせる。
どうやら出張で近くまで来たので飲みたいとのことだ。
退社する理由が出来たことを影山に感謝し、大学時代によく通ったジャズバーセピア
に急いで向かった。
懐かしい。
周りは大分変わったのにここはあの時のままだ。
洒落たネオン看板の前でしばし思い出に浸ってから中に入った。
低く流れるジャズとミュシャの絵に再会しつつ店内に視線を巡らせた。
影山が奥のカウンターで手を上げている。
「よう、はやいな」影山が腕時計に目を落としながら言った。
「お前に会いたくてしょうがなくてな」ボクは苦笑いを浮かべながら答えた。
席に着くなりお約束のカシスオレンジを頼む。
「お前相変わらずお子ちゃまだな」すかさずつっこみが入る。
「うるせ、それより何か話があるんだろ?」
「お前をスカウトに来てな」
「スカウト?」
おうむ返しにまぬけな声をだしてしまった。
「宇宙(そら)に上がる気はないか?」
何を言っているんだ?
人間は理解力を超える言葉を聞くと金縛りにあうと初めて知った。
影山は熱っぽく何かを話しているが全く耳に入らない。
「で、どうする?俺は明日東京に帰るからそれまでに返事が欲しいんだが」
明日って急すぎるだろが。
「少し考えさせてくれないか」搾り出すような声で答えた。
「明日の21時までに返事をくれ」カクテルを飲み干し勘定を置いて影山は店を出た。
残されたボクはカシスオレンジを無意味にかき混ぜていた。
眠い。
まだ定時まで2時間もあるのに眠くて仕方が無い。
昨日の一件がボクから睡眠時間を奪った。
栄養ドリンクとチョコ片手にパソコンの画面とにらめっこだ。
そして何故かこんな時ほど仕事が山のように来る。
だめだ、一服してこよう。
たまらずいつもの場所に避難する。
ボクが会社で落ち着けるのはここだけ。
この時だけは自分に戻れる。
21時まで残り約4時間。
それまでにのるかそるか決めなくては。
「宇宙か・・・」クローゼットの奥にしまいこんだ宝物を見つけた気分だ。
ほこりを被って忘れ去られていた宝物だが。
タバコの煙が目にしみて涙が出る。
さぁ戻ろう。
時計に目をやるともう20時を少し回っていた。
約束の時間までもうない。
そろそろ腹を決めなくてはいけないのだがボクの性格上踏ん切りがつかない。
何かきっかけが欲しい・・・
その時天啓のような内線電話が鳴った。
どうやら社長がお呼びのようだ。
社長室に向かう前にトイレで顔を洗い気合を入れていく。
失礼します。
一礼をし中に入るとどっから見ても悪党にしか見えない中年男がいた。
机の前に来た時に明日からこなくて言いと告げられた。
これが神の意思ってやつなのか?
ボクは部屋を出る前に社長にゴルフクラブを一本借りれないか頼んだ。
怪訝な顔をしつつも了承されたので高そうなドライバーを一本取り出した。
さぁやってやるか。
目の前にあるぼくが作った模型に強烈なスイングを加えた。
破壊された模型を満足そうに眺めているボクを危ない目で見つめる同僚たち。
「田中くんどうしたんだ?」上司がこわごわ聞いてきた。
「上京するまえにすっきりしたかったんです」ボクはにこっと歯を見せて笑った。
行こう、東京へ。そして宇宙へ


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[ 2013/03/19 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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