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星くずの夜(2.2)

マンションの一室で男たちが麻雀に興じている。
表に看板らしき物も出さずにひっそりと営業しているのは察しの通り
違法賭博場だからだ。
いかにもボスと言った感じの男が店に新たに入ってきた。
「何か変わった様子は?」
カウンターのボーイに尋ねる。
「今日は特に変わったことはありませんねー」
「そうか」
男がタバコに火を点けたと同時に視線が止まる。
「あの男は?」
アゴで対局中の客の男を指す。
「あー、あの客ならさっきから勝ったり負けたりで大した奴じゃないですね。」
「ちっ、面倒な奴が帰ってきたぜ。」
男は、タバコを灰皿に押し付けいまいましそうにする。

話題の客は、トップだったがリーチに一発で振り込み、まくられた。
「あー、今日はツイてない。この辺で止めとくわ。」
「では、清算します。」
ボーイが手際よく処理する。
「あれ?あんだけ打ったのに皆トントンだな。珍しいこともあるね。あはは。」
面子の一人がおどけてみせる。
「じゃあ、また暇な時に来るんでよろしく。」
相手にせずさっと席を立つ。

客の男と、店のボスの視線が交錯する。
「よう、久しぶりだな武藤。」
「何だ、お前の賭場だったのか。悪かったな、もうここには来ないよ。」
「別にかまわんさ。それにしても相変わらず見事だな。場を完全に支配している。」
「この程度は差ほどの事もない。ただの腕ならしだ。」
二人の会話についていけない面子たちはポカーンと言った表情だ。
「例のイベントに出るつもりなのか?」
ボスが武藤に尋ねる。
「オレは気まぐれだからな。」
「そうか、なら俺は出るのを止めておこう。」
「何だ、久しぶりに打たないのか。」
「俺は自分より強いやつとは打たない主義だ。」
「そうか。」
立ち去ろうとする武藤にボスが声をかける。
「ヘブンズドアには行ったか?」
「いや、まだだが。」
「今は、沢村が仕切っている。」
「・・・」
「お前たちの因縁にも決着が着くかもな。」
「・・・」



ヘブンズドア

某IT企業が暴れまわっていたころに散々話題になった商業施設で堂々と営業していられるのは
政財界の大物が顧客だからだ。
勿論セキュリティーは万全。顧客の情報が他に漏れることは決してない。
いつの世も、権力者は特別な存在だ。
店内は、華やかな装飾と美女達で埋め尽くされ、さながらラスベガスと言った感じだ。
今夜も、ボディーガードを引き連れて黒い噂の絶えない某大臣が来店中だ。
沢村は今夜も忙しく歩き回っている。
何と言っても、大のお得意様の某大臣は、羽目を外しすぎてトラブルを巻き起こすからだ。
「マネジャー、田代大臣がまた問題を・・・」
ボーイが申し訳なさそうに報告する。
ふう、沢村が何度目かの深いため息をつく。
「今度は何だ?」
もう飽き飽きだと言う表情だ。
「それが、見慣れない客とポーカーを打っているんですが既に600は持って行かれてます。」
おいおい、勘弁してくれと言った表情の沢村。

ポーカーの周りはやじ馬で埋め尽くされていた。
皆、田代がどこまでハマるかおかしくてしょうがないと言った感じだ。
「田代大臣、そろそろこの辺で・・・」
沢村はそっと耳打ちをする。
「こんなところで帰れるわけないだろ。取り返すまでやるぞ。」
頭に血が上った田代には何を言っても通じない。
沢村は、どんな相手か初めて確認し己の不運を呪う。
田代と同卓した相手が武藤だとは。
「武藤さん、お久しぶりです。」
うやうやしく挨拶をする。
「あの時以来だな。」
武藤は、気のない返事だ。
「武藤さん、ここは退いてくれませんか?」
「何、勝手なことを言っている。」
田代の怒号がこだまする。
「オレは、お前に挨拶に来たついでに遊んだだけだからな。」
そういうと武藤は席を立つ。
「おい、ふざけるな。」
田代は武藤に掴みかかろうとしたところを沢村に取り押さえられる。
後を引き継いだボーイに促され田代は、渋々控室に連れて行かれる。
「武藤さん、今更何をしに来たのか知りませんが、俺はあのころとは違うし、もう戻れないんですよ。」
「オレは、決着を付けに来ただけだ。ただ、それだけだ。」
遠くから見守っていた女がニコッと微笑んだ。
























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[ 2016/06/22 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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