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星くずの夜(2.5)

予選も後半に入り大部淘汰されてきた。
残っているものは海千山千の曲者たちだ。
武藤には、予選で最大の難関が待ち受けていた。
今までの相手とは格が違う。
一瞬の隙も許されない、息詰まる戦いになるだろう。
だが、武藤はいつもと変わらず冷静な面持ちだ。
目の前の猛者に武藤は語りかける。
「八木沼、自分より強いやつとは打たないんじゃなかったのか?」
「ふっ、スポンサーの意向には逆らえんさ。」
予選最高の対局が始まった。

序盤からお互い真っ向勝負の殴り合いだ。
リーチが入っても、無筋を切り互いに一歩も引かない我慢比べだ。
少しでも弱気になると一気に流れを持って行かれる。
ギリギリの攻防が続く中、他の二人はお客さん状態で全く参加させてもらえない。
予選は、半荘2回の合計点で決まる。
どちらか一回を大勝すれば問題ないが、一流のプロ同士の対局でそう都合のいいことは起こらない。
ガードの上から強打を浴びせ、相手の心が折れるまでひたすら殴り続ける。
極限状態の中、辛うじてリードを奪った武藤が初戦を勝利する。

休憩を入れずに、2戦目が始まる。
武藤はわずかなリードを守りたい。
しかし、勝負事は少しでもぬるい手を打つとあやが出来、形勢が変わってしまう。
自分にも、相手にも厳しい一打を打ち続ける武藤。
お互いに限界が近い。
来るしさで息が詰まりそうになる。
その時だ、ポロッと出たドラに八木沼がチーをした。
一見、チャンスを掴んだかのように見える鳴きだが、武藤はそうは見なかった。
ついに、我慢が出来ずにガードを下げたのだ。
この局八木沼に安手で上がられたが武藤には勝機が見えた。
一度でも、折れれば肝心なところで迷いが出る。
そこに、武藤は賭けた。
オーラス、点差は僅かながら武藤がリードを奪われている。
一戦目の勝ち分とほぼ同等。
この一局で全てが決まる。
1000点でもいい。先に上がった方が勝者となる。
お互いスピード重視で手を進める。
八木沼は食い仕掛けをした。
露骨な手だが、勝ちに行く厳しい手だ。
このまま勝ちきろうとする八木沼に、待ったをかける武藤のリーチが入った。
その一巡目、八木沼の手が止まる。
捨て牌に困ってしまったのだ。
役牌を鳴き、上りに一直線だった八木沼の掴んだ牌は東。
東はションパイで、危険極まりない。
いつもの八木沼なら平然と東を切っただろう。
だが、心の奥底に武藤との我慢比べに逃げた弱気な心が迷いを生んだ。
迷った末に切ったのは2ピン。
武藤の現物であり、東の単騎待ちに変えたのだ。
数順後、武藤は4マンをツモ上がった。
倒した手牌には、東が暗刻で揃っていた。
静かに席を立った八木沼が武藤とすれ違いざまにささやいた。
「観月には気を許すなよ」

死力を尽くした対局の疲れもあったが予選終了を見守るために壁際にいる武藤の前に
観月が現れる。
「流石ですね。見事に八木沼さんを退けました。」
「お前の思い通りにはなかなか行かないと言うことだ。」
「あなたは、世界一強い麻雀打ちですが、少々甘いところがあります。
刺客として送り込みましたが彼には荷が重すぎましたね。」
「お前のやることに一々口を出す気はない。」
予選の終了を待っている二人に終了のアナウンスが告げられた。
決勝は、武藤、美里、沢村、小池の4人に決まった。
「予定通りのメンバーですね。」
「何を考えているのかは知らないが、オレの邪魔はするな。」
「武藤さん、私はただ楽しみたいだけですよ。」
観月はうれしそうに微笑んだ。












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[ 2016/08/02 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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