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欠片を求めて(1)

都内にある大規模病院の食堂で塩っ気のない定食を食べる、平木圭と宮エリ。
毎日ヘルシー料理が食べれてうらやましいと思うのは最初だけだろう。
禁断のマヨネーズたっぷりの中毒ポテサラが食べたくなるはずだ。
マヨラーにとっては、ここの食事は苦行以外の何物でもない。
もっとも、平木と宮はマヨラーではないが。

「今日も、桜井先生にたっぷりしごかれたよ。」
平木は、苦笑いを浮かべる。
「桜井先生は、厳しいからねー。よくもってると思うよ?」
宮は、くすくす笑う。
「あの人は、ボクに、やたら厳しい。」
「そんな事ないよ。前の人なんて3か月もたなかったからね。
優しい方じゃない?」
「皆が、ボクがいつまでもつか、話題にしてるのは知っているが、恐ろしい事言うなよ。」
「私は、期待してるよ?」
「どういう期待かは聞かないでおくよ。」

会話の途中で、平木の視線が一人の幼い女の子に注いだ。
女の子は、どうやらニンジンを食べたくないようだ。
もう一人の、10代後半あたりの少女が何とか食べさせようと奮闘中だ。
それを見ていた平木が、おもむろに行動する。
二人が何をやっているかは誰が見ても分かるが。
何を話しているのかは限られた人間にしか分からない。
(にんじん食べたくないの?)
平木が女の子に話しかける。
(うん。)
女の子が答える。
(ボクも食べるの苦手なんだ)
(大人なのに好き嫌いしちゃだめだよ)
強烈なカウンターが返ってきた。
(隣の人は彼女?)
平木は、宮をちらりと見て友達だと答えた。
女の子は、少女に手を引かれて立ち去った。
「平木先生、手話なんて出来たんだ?」
宮は、意外だと言う表情だ。
「昔、少しだけ勉強したんだよ。手話なんて何年振りだろう。」
「特技があると何かしら役に立つことあるのね。」
「何か勉強したら?」
「この仕事してたら、そんな時間なんてないよ。」
「そうだね。」
「そろそろ戻らないと、桜井先生の雷落ちちゃうよ?」
「まずい、それだけは勘弁してくれ。」
平木は、慌てて席を立つ。
「廊下は走らないようにね?」
宮の言葉を無視して早足で桜井の元に向かった。



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[ 2016/11/22 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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