FC2ブログ

2019 07123456789101112131415161718192021222324252627282930312019 09






欠片を求めて(5)

当直の疲れを癒した平木は、病院に戻る。
桜井は、情け容赦なく激務を平木に課すだろう。
さあ、地獄の日勤の始まりだ。


体力に自信のある平木だが、こういう時に限って患者が殺到する。
看護師も忙しく動き回り、正に戦場の体と言ったところだ。
あちらを立てればこちらが立たず、やっと収まったと思ったら
桜井から、鬼のように指示が飛ぶ。
無心に業務をこなし続け、夕方になり待望の食事にありつくために
食堂に向かう平木は、またしても少女に捕まってしまった。
「先生、すっごい疲れた顔してるね。」
「地獄から、生還したばっかりだからね。」
平木は、ヘロヘロになりながら答える。
「先生これから食事なんでしょ?」
「あの味気ない食事も、空腹にはごちそうだよ。」
「疲れたときは、甘いものが一番。外に食べに行こうよ。」
「甘いものか・・・」
平木の、心の迷いを逃がさないかのように腕を掴み引っ張る。
「さあ、行こう?」
平木は、なすすべもなく連れて行かれた。


おしゃれなインテリアに囲まれた、レストランでの食事に大満足の平木。
こんな近くに、あるとは知らなかった。
だが、値段が割高なのが唯一の難点だ。
少女は、幸福を絵に描いたようにデザートをほおばっている。
「このデザート前から食べたかったんだよねー。先生見つけてラッキーだった。」
「わざわざ一番高いのを選ぶとはね。」
「収入は十分もらってるんだから使わないとね。」
「まあ、忙しすぎて使う暇もないけど・・・」
「先生、何で医者になったの?」
よくある質問だ。
「特に理由はないよ。君こそ何故ボランティアを?」
「私も、特に理由はないよー。」
「そうか。良いことに理由なんて特に必要ないしね。
さて、そろそろ戻らないと雷が落ちる。出よう。」
店を出た二人は、軽く別れの挨拶をして別々の道を行った。


帰るなり平木は、桜井から大量の資料を渡される。
「平木〜私は、小用が出来た。さっさとこれをまとめておけ。」
「これを全部ですか?」
「半人前のお前には、雑務がお似合いだ。文句があるのか?」
「何もありません。後は、任せてください。」
桜井の後ろ姿から、大量の資料に目を移し、途方に暮れる平木だった。
スポンサーサイト



[ 2016/12/07 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://betabetao.blog.fc2.com/tb.php/88-2ed27b34