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欠片を求めて(11)

「平木先生、大丈夫かい?」
中年男性が心配そうに声をかける。
「え、ボクがどうかしましたか?」
平木は、はっとして返事を返す。
「最近、いつも以上にぼけっとしてるけど調子でも悪いの?」
「ちょっと忙しくて疲れてるだけなので大丈夫ですよ。」
平木は、苦笑いを浮かべる。
「医者が、過労で倒れるなんて縁起でもないから頼むよ。」
「斎藤さんが、退院してから倒れるんで問題ないです。」
「ははは、なら安心して任せられるよ。」
「患者に心配される、頼りない医者ですけどね。」
平木は、微笑を残して回診を終えた。

「平木先生。」
平木が、身支度を終え戦場を退勤しようとしたところに宮が声をかける。
「何かあった?」
振り返り、応える。
「いや、桜井先生が呼んでるよ。」
「何の用だろう。」
「知らないけど、結構重要な話なんじゃないの?」
「気が進まないな。」
顔が引きつる。
「嫌なら断ってみる?その後どうなってもしらないけど。」
「行ってくるよ、雷が落とされないことを祈りながらね。」
「行ってらっしゃい。」
宮が、ニコニコ笑顔で手を振る。

「平木~飲みに行くぞ。」
開口一番、桜井の意外な言葉に緊張していた平木は拍子抜けした。
タクシーで、飲食街に出かける。
桜井のことだから、高級店に行くのかと思いきや、場末の小さな店だ。
店内は、アットホームな雰囲気で皆楽しそうだ。
「お、京子ちゃん久しぶり~。」
「おじさん、ガンガン飲むから適当につまみ持ってきて。」
「あいよ。せっかく顔出してくれたからサービスしとくね。」
席に着くなり、ビールの大ジョッキを美味そうに飲む桜井。
「ずいぶん親しいみたいですけど、どれくらい前から通っているんですか?」
「大学時代からだな。忙しいからあまり来れなくなったが顔は出すようにしている。」
「確か先生は、沢井先生と同じ大学ですよね?」
「ああ、よくあいつをここに連れてきてやってたよ。」
「沢井先生って、どんな人だったんですか?」
「ん、あいつに興味があるのか?」
「いえ、聞いてみただけです。」
「まあ、飲め。あいつの事なら後で詳しく話してやるよ。」
桜井は、大ジョッキを飲み干した。

「だからよ~あいつは当時から生意気でさ、腕がいいから余計に反感食らってたんだよ。今と変わんねーよ。」
大ジョッキ3杯目の桜井。
「お前、ここんとこ様子が変だぞ。」
「すみません。」
「説教してるんじゃねーよ。話を聞いてやるって言ってるんだよ。」
「昔の事を思い出していて、そればかり考えてしまうんです。」
「昔の事って何だよ。」
「医者になった理由です。先生は、何で医者になったんですか?」
「親が医者だったからだよ。開業医で、毎日見てりゃ自然となりたくなるものさ。」
大ジョッキ3杯目を飲み干す桜井。
「ボクは、妹が病気でなくなったのがきっかけなんです。何も出来なかった自分が悔しくて。
妹は、生まれつき心臓が弱く、それが原因でなくなりました。心臓外科を希望したのもその為です。」
桜井は、無言でビールを口にする。
「今も、自分の無力さを痛感して妹の顔が頭から離れません。」
「医者は無力だよ。やれることをやるだけだ。今日は朝まで付き合え。帰らせねーからな。」


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[ 2017/03/20 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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